2009年1月24日土曜日

男たちの旅路 第3部 第一話 シルバー・シート

◆電車ジャックした老人ホームのメンバと吉岡が
・身寄りのない老人ホームのメンバ:
 「歳をとるということが、歳をとるまでわからない。自分を必要とする人がいません。ただ、世間の重荷になってしまう。自分は人に愛情を感じる。しかし、私が愛されることはない。仕事をしなくても場もない、そもだいたい仕事に喜びを感じなくなってくる。名誉などというものの空しさがわかってくる。もうろくがはじまったかな、と思う。しかし自分のもうろくは自分ではわからない。捨てられた人間です。いずれあなたも使い捨てられるでしょう。しかし歳をとった人間はね。あんたがたが小さいころ、電車を動かしたり、踏み切りを作ったり、学校を作ったり、米を作っていた人間です。あんたがころんだとき起こしてくれた人間かもしれない。しかしもう力がなくなってしまった。じいさんになってしまった。するともう誰も敬意を表するものはない。きのどくだとはいってくれる。同情はしてくれる。しかし敬意を表する者はない。右手の不自由な役立たずのじいさんに誰が敬意を表するかと言われるかもしれない。しかし、人間は、してきたことで敬意を表されてはいけないのかね?今はもうろくばあさんでもりっぱに何人の子供をそだててきたということで、敬意を表されてはいけないのかね?そういう過去を大切にしなきゃ、人間の一生っていったいなんだい?歳をとれは誰だって衰えるよ。しかし、この人はこうこうこうしたことをやってきたということで敬意を表されてはいけないのかね。そうでなきゃ、次々と使い捨てられていくだけじゃないのかね?」

・吉岡:
 「お気持ちはわかりましたが、違うんじゃありませんか?私も似たような気持ちをもっています。私はいまだに戦争というものを引きずっている人間です。戦争の体験から抜け出せずにいるんです。バカだといわれます。いいかげんにしろとも言われる。しかし、まわりがあまりにも早く忘れすぎる。いや、忘れるだけならいい、誤解をして、高をくくっている。まぁ、それがやりきれなくて、戦争から抜け出せずにいるんです。たくさんの友人を失いました。その友人が内心は軍国主義反対だったと言われれば違うと思い、国にだまされていたと言われれば違うと思い、なぜ反抗しなかったのかといわれたら、カーッとして、つまりは何もわからないんだと思います。せめて自分ひとりだけは、死んだ友人の本当の姿を憶えていたいと思うんです。しかし、それを世に訴えようとは思わない。言葉で伝えられるようなことはたかがしれています。つまりは、一緒に生きた人間が、忘れずにいてやるしかない、と思うんです。誰も皆さんに敬意を払わないのはご無念でしょう。しかし、それをこういうことで抗議しては、立派な過去を汚すだけじゃないですか。こんなことをした皆さんを世間は敬意を表すると思いますか?私は間違っているんじゃないかと思いますねぇ。私は20年後の覚悟は出来ています。少なくともこんなことはしない。歳をとれば判るというくらいなら、何故こんなところに閉じこもったのですか。はっきり言いましょう。皆さんは甘えている。こんなことをした以上、通じても通じなくても良いから、表にでて言いなさい。そうでなければ、若い連中に皆さんのしたことが何のことかわからんでしょう。戸を開けて、いうだけ言いなさい。でなきゃすねた子供が押入れにとじこもったのとかわらんでしょう。皆さんは子供じゃない。男はこういう風に甘えるべきではなかった。そのように言っておきます。」

・老人
「吉岡さん、これは年寄りの悪あがきです。だまって警察に引き渡してくれますね?」

・吉岡
「はい。だまって。」

・若い人
「司令補、何をいわれたんですか。」

・吉岡
「お前も歳を取るといわれた。ただ、それだけのことだ。皆使い捨てにされる(それ以上は何も言わない)」

そういう覚悟が必要ということです。

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